
こんにちは、英心うえの塾高校部「理数適塾」の河合です。
数学の授業を4時間。長いと思いますか?
2026年10月24日、英心うえの塾高校部「理数適塾」で、野田亮太先生による特別講義を開催しました。テーマは「場合の数・確率」です。
「4時間の授業は初めてだったが、体感は大分早く感じた。それだけ密のあるものだった。」
「4時間が短く感じました。」
講義後、生徒たちから寄せられた感想です。私自身も、あっという間の4時間でした。
そして今回、ぜひお伝えしたいのは、その4時間の中身です。
最初に取り組んだのは、A・B・C・Dの4文字を並べ替える問題。それが最後には、さいころを何回も振ったときの最大公約数を扱う問題へつながっていきました。
最初の「なぜ?」が、最後の難しい問題を解く道具になる。
「確率の公式は覚えた。でも問題を見たら手が止まる」「数字なら考えられるのに、n が出てくるとわからなくなる」。そんな人にこそ、この授業を体験してほしかったと思います。
ゴールが明確だから、最初の一問にも意味がある
今回の中心は、反復試行の確率。さいころを繰り返し振るなど、同じ条件で試行を繰り返す場面の確率を考えるものです。
場合の数は、条件に合う可能性を漏れなく、重複なく数える分野。その考え方が、確率を求める土台になります。
野田先生は冒頭に、反復試行の確率をできるようにする、というゴールを示しました。そこに必要な場合の数を復習し、さいころ2個・3個の問題から、5回、そして n 回へ。段階を踏みながら進んでいきます。
4時間の学びが、一本につながる
1. 数え方の意味を理解する
階乗・同じものを含む順列・組合せのつながりをつかむ。
2. 表で確実に数える
さいころ2個・3個の可能性を整理し、漏れや数えすぎを防ぐ。
3. 同じ手順で、問題を広げる
5回の反復試行から n 回へ。場合分けや余事象を組み合わせる。
難しい問題の解説だけを聞いても、「先生はできるけれど、自分には無理」で終わってしまうことがあります。今回の授業には、そこへ向かうための足場が、一問ずつ用意されていました。
「どうして割るの?」から、公式がつながり始める
A・B・C・Dを並べるなら、最初は4つから選び、次は残り3つ、その次は2つ、最後は1つ。だから「4×3×2×1」です。
では、同じ文字が2つあったら? 3つあったら?
先生は、同じ文字に仮の番号をつけて区別し、入れ替え方を実際に考えさせます。そして番号を外すと、別々に数えていた並びが同じものになる。だから、重複して数えた分を割る。
さらに、「Aを2個、Bを3個並べる」問題と、「5か所からAを置く2か所を選ぶ」問題を結びつけます。Aの場所が決まれば、残りはB。そのため、並べ替えと組合せが同じ式で表せるのです。
一見すると別々の公式が、同じ配置を数えているとわかる。この説明が、後半の確率で何度も生きてきます。
「新たなやり方を教わり、同じものであったことに気づいたので、これからは自信をもって解答を始められそうだ。」
組合せの記号や階乗を使った式を別物のように感じていた生徒の感想です。覚えるものが増えたのではなく、知っていたものがつながった。この手応えは、大きいですね。
速さより、確実さ。216通りも「見える形」にする
さいころ2個なら、出方は36通り。先生は6×6の表を書き、条件に合うマスを確認する方法を勧めます。
次は、さいころ3個。出方は216通りです。
ここでも、いきなり難しい公式へ飛びません。6×6の表の各マスに、3個目の目が積み重なっていると考えます。先生の説明は、各マスに6階建てのビルがあるようなイメージ。紙の上の表から、立体的に可能性を捉えていきます。
実際には各マスに、3個目の目が条件を満たす個数を書き込む。こうすると、216通りを整理して確認できます。
授業中、先生が繰り返し大切にしていたのは、急いで間違えるより、時間をかけても正確に考えること。
「表を書くなんて遠回りかな」とためらっていた人にも、取り組む方法が示される。数学が得意な人だけに通じるひらめきに頼らず、自分の手で確かめられる進め方でした。
「5回振る」からは、横に書く。同じ手順が何度も使える
回数が増えると、すべての出方を表で確認するのは大変になります。そこで、1回目、2回目、3回目……と横に並べ、それぞれで何が起こればよいかを書いていきます。
例えば、さいころを5回振り、1の目がちょうど2回出る問題。まず「1・1・1以外・1以外・1以外」という一つの並びを考え、その確率を求めます。
ただし、1が出るのは最初の2回とは限りません。5回のうち、どの2回で1が出るか。ここで、冒頭に理解した組合せが登場します。
「そのために、最初にあの数え方を学んだのか」。授業の前半と後半が、ここでつながります。
反復試行を考える、共通の手順
様子を書く
各回に何が起これば条件を満たすかを、横に並べる。
一つの並びの確率を求める
今回の独立した試行では、各回の確率を掛け合わせる。
並び方と、別の場合を考える
同じ確率の並びを数え、重ならない場合を足す。含めてはいけない場合は引く。
その後も、出る目の和、積、最大値、最大公約数と、問い方が変わっていきます。それでも、まずは各回の様子を書く。並び方を考える。見落とした場合がないか確かめる。
問題が変わるたびに、新しい解法を探さなくてもよい。共通の手順を繰り返し使うことで、どこから考え始めればよいかが見えてきます。
「少なくとも=余事象」で終わらせない
もう一つ印象的なのが、余事象の説明です。余事象とは、求めたい出来事が起こらない場合のこと。その確率を求め、1から引いて答えを出す方法があります。
例えば、さいころ5回の出目の積が偶数になる確率。偶数が1回、2回、3回……と分けることもできますが、「全部奇数になる場合」を考える方が整理しやすくなります。
ただ、先生はそこで「少なくともと書いてあれば余事象」と覚えさせることをしません。
大事なのは、場合分けが多いから、反対の条件を考えると楽にならないか、という判断です。
問題文の特定の言葉に反応するだけでは、少し違う聞かれ方をしたときに困ってしまう。なぜその方法を選ぶのかまで考えることが、最後の問題への準備になっていました。
「n が出たら無理」を、5回の問題から乗り越える
後半、試行回数が「5回」から「n 回」に変わります。
それだけで身構えてしまう生徒もいるはずです。でも、先生はここでも同じように横に書き、考えさせます。
例えば、5回振って出目の和が7になる問題。全部1なら合計は5。あと2増やすには、「1か所を3にする」か「2か所を2にする」。
n 回振って和が n+2になる問題も、同じです。全部1なら合計は n。あと2増やす方法を考えればよいのです。
文字が難しく感じるときには、n に10などの数字を入れて考えてみる。具体的な問題に戻って、仕組みをつかむ。
5回でわかった考え方が、そのまま n 回でも使える。このつながりを体験できることに、授業の価値があります。
「n 回の問題が苦手だったけれど、ていねいに考えていけば意外とむずかしくないなと思うことができました。」
難しい記号を見ても、まず自分の知っている考え方で取り組んでみる。そんな姿勢につながる感想だと思います。
最後の板書に、4時間の学びが集まっている

講義の最後に残った板書。冒頭の数え方から積み上げた考え方が、一つの確率の問題につながりました。
最後に取り組んだのは、さいころを n 回振り、出た目の最大公約数が1になる確率を求める問題でした。最大公約数とは、いくつかの数を共通に割り切れる、いちばん大きな数です。
この問題では、最大公約数が1になる出方を直接整理するのが大変です。そこで反対の「1にならない場合」を、2・3・4・5・6になる場合に分けて考えます。
最大公約数が2なら、すべて偶数。ただし全部4や全部6では、最大公約数が2にはなりません。こうした例外も除いていきます。
それぞれの確率を足し、最後に1から引く。反復試行、場合分け、不要な場合の除外、余事象。それまでに使ってきた考え方が、一つの問題の中で働いていました。
この問題は、先生と一緒に考えながら取り組んだものです。全員がその場で一人で解けるようになった、と言うつもりはありません。
それでも、最初は難しそうに見える問題に、自分が学んだ考え方で近づいていける。あの最後の板書は、4時間かけて積み上げた学びの到達点でした。
テキストなし。その場で考え、学びが一冊のノートに残る
今回の授業には、配布されたテキストがありません。生徒たちはノートを開き、黒板の問題を解き、考え方を書き留めていきます。
先生は生徒に問いかけ、答えを聞き、理解の様子を見ながら次の問題へ進みます。正解でも、なぜそう考えたのかを確かめる。難しければ、もう一度具体的な例に戻る。
説明を聞く時間と、自分で考えて解く時間が、何度も行き来する授業。
式を立てる考え方をたくさん練習するため、授業では最後の数値計算を省く場面もありました。一方で、試験では必要な計算まで仕上げることも、その都度伝えています。何に時間をかけるかが明確です。
そして最後には、問題も考え方も、自分の学びがノートに残る。授業が進むにつれて、自分のための教材ができあがっていく。このノートを、ぜひ復習に生かしてほしいと思います。
生徒たちが持ち帰ったもの
※氏名・学校名・志望校などを伏せ、感想の一部を抜粋しています。
「基礎が整っていれば、解き方が見えてくる」
「学校でまだ習っていなかったので最初についていけるか不安だったけど、理解できたのでよかったです。難易度が上がるとつまずくこともあったけど、解き方は基礎が整っていれば見えてくることが分かりました。」
問題が難しくなると、特別な解き方が必要に思えることがあります。そこで、基礎とのつながりに気づけたこと。この実感は、これから数学を勉強するうえでも大切にしてほしいですね。
「知っているつもり」の先に、新しい考え方があった
「確率はきちんと勉強していたつもりだったけれど、3次元の表や横に並べるやり方など、新しい考え方を知れてよかったです。」
一度勉強した単元でも、別の整理の仕方を知ると、問題の見え方が変わります。「習ったことがある」からこそ、これまでの自分の考え方と比べながら学べることもあります。
ばらばらだった知識が、つながった
「新たなやり方を教わり、同じものであったことに気づいたので、これからは自信をもって解答を始められそうだ。」
この生徒は、組合せの記号や階乗を使った式を、それぞれ別物のように感じていたそうです。それが授業を通してつながった。
「どの公式だろう」と迷っていたところから、「まずこう考えよう」と答案を書き始められるようになる。数学では、こうした変化が大きいのだと思います。
難しかった。それでも、新しいものを持ち帰った
もちろん、全員がすべてを簡単に理解できたわけではありません。
「最初からずっと難しくて追いつけなかったけど、新しい内容や、自分では絶対にしない考え方を知れてよかったです。」
この感想も、大切にしたいと思います。難しかったことを正直に受け止めながら、それでも新しい考え方を見つけている。
今回わからなかったところは、ノートを見返し、学校での学習やこれからの演習とつなげながら、少しずつ自分のものにしていけばよいのです。
「もう一度解けるようにしたい」
「復習をして、同じ問題やこれを応用した問題がでてもとけるようにしたいです。」
授業を受けて終わりではなく、次の行動まで考えてくれていることがうれしいですね。そのほかにも、階乗の意味、さいころが複数ある問題の整理、組合せの使い方、余事象の考え方などについて、「わかった」という感想が寄せられました。
野田亮太先生について

野田亮太先生の授業風景(今回の特別講義とは別の写真です)。
野田先生は、大学在学中から学習教材の制作・販売に携わり、その後、予備校での数学指導や進学塾の設立・運営、教員研修、講演など、幅広く教育に関わってこられました。
岡山進學舎やNaseva進学予備校の設立にも携わり、授業づくりと学習支援の両面で経験を重ねてこられた先生です。
今回、ほとんどの生徒にとって、野田先生の授業は初めてでした。受講生からは、こんな声もありました。
「ポジティブな言葉をかけてくださり、楽しく授業に参加できたし、勉強のモチベーションがあがりました。また機会があれば野田先生の授業を受けたいです。」
難しい内容に挑戦する時間を、前向きな気持ちで過ごせたことも、今回の講義の大きな価値だったと感じています。
今日のノートを、次に解ける力へ
4時間、集中して学んだ皆さん。お疲れさまでした。ぜひ、今日のノートをもう一度開いてみてください。
おすすめは、解き方を隠して、一問、自分の力で解いてみること。
「わかった」から「自分でできる」へ
1. 解き方を隠して、一問解く
自分の力で、どこまで進めるかを確かめる。
2. 止まったところを確認する
ノートを読み、考え方を確かめる。
3. もう一度、自力で取り組む
理解したことを、答案で再現する。
授業中に「わかった」と思ったことが、次には「自分でできる」に変わっていきます。
「4時間があっという間だった」
そんな時間の中で見つけた考え方や手応えを、これからの数学につなげてほしいと思います。
今回参加しなかった皆さんにも伝えたいことがあります。「まだ習っていないから」「数学が苦手だから」「もう一度勉強した単元だから」。今回の感想には、それぞれの立場から新しい学びを得た声がありました。
一つの考え方がつながると、これから問題集に向かう時間も変わります。どの公式かを迷う時間が、条件を整理する時間に変わる。解説を眺めるだけだった問題で、自分から一行を書き始められる。そのきっかけになる授業でした。
こうした特別講義をご案内するときには、テーマや時間だけでなく、そこで何が学べるのかも、もっと具体的にお伝えしたいと思います。次の学びの機会を選ぶときには、ぜひ今回の生徒たちの声を思い出してください。
野田先生、充実した4時間をありがとうございました!
