医学部一般入試は難化する?――福井大学『後期廃止』の先にある医学部受験の変化
理数適塾の中村です。
最近、塾では医学部医学科を志す子が増えていて、早期準備をしています。
確かに、「医師になる!」と決意した場合、日本においては、国公立であれ、私立であれ、六大の医学部医学科に行くのが唯一のルートです。
そうなると、医師になりたい子は医学部医学科に行くしかありません。
私立大学の医学部医学科は、相当高額な学費、寄付金が必要になると思われるため、多くのご家庭では国公立大の医学部医学科に送り出すというのが現実的な選択肢になります。
ここはですね、文系大学志望の高校生とは事情が大きく異なります。
文系志望の子については、学部学科ももちろん重要な進路選択なのですが、どの大学に行くかが結構重要なんです。
医学部志望の子についても、どこの大学でもいいというわけではないのですが、最終的には、「医学部医学科に行く!そして医療を学び、医師を目指す!」という明確な目標があるのです。だから、まずは医学部医学科に行かなければ!という至上命題があるのです。
最近の医学部入試の事情を見てみましょう。
医学部一般入試は難化する?――福井大学「後期廃止」の先にある医学部受験の変化
以前の記事で、2028年度入試から福井大学医学部医学科の後期日程が廃止される予定であることをお伝えしました。
▶ 前回の記事「福井大学医学部医学科・後期日程廃止について」
福井大学では、2028年度入試から次のような変更が予定されています。
| 入試方式 | 現行 | 2028年度予定 |
|---|---|---|
| 一般選抜・前期 | 55名 | 70名 |
| 一般選抜・後期 | 25名 | 廃止 |
| 学校推薦型選抜Ⅱ | 34名 | 44名 |
この変更を見て、
「これから医学部の一般入試は、もっと難しくなるのでは?」
と感じた方もいると思います。
今回は、この問題についてもう少し踏み込んで考えてみたいと思います。
結論:「医学部全体が一律に難化する」とは言えない
まず、ここは冷静に見ておく必要があります。
2026年度の国公立大学医学科・前期日程では、志願者数は14,517人で前年比95%。倍率も前年の4.1倍から4.0倍へ低下しました。
河合塾によれば、国公立医学科の前期倍率は、この10年間で見るとむしろ低下傾向です。
つまり、
医学部人気が急激に高まり、受験生が激増しているから難しくなっている
という状況ではありません。
ところが、別の問題が起きています。
それが、
「一般入試で医学部に入るための選択肢が少しずつ狭くなっている」
という変化です。
医学部の「後期日程」がどんどん減っている
2026年度入試では、医学科で
- 旭川医科大学
- 山形大学
- 佐賀大学
などが後期日程を廃止しました。
福井大学も、2028年度入試からこの流れに加わります。
これが何を意味するのでしょうか。
「前期で失敗して、後期でもう一度」が使いにくくなる
これまで国公立医学部受験では、
前期:第一志望・チャレンジ校
↓
後期:別の医学部でもう一度勝負
という受験戦略がありました。
ところが、後期日程を実施する医学部が減れば、この戦略そのものが取りにくくなります。
さらに、後期を廃止した大学の受験生が、残っている後期日程へ移動します。
つまり、
後期という「二度目のチャンス」が減り、残された後期日程にも受験生が集まりやすくなる。
ここは、これからの医学部受験を考えるうえで非常に重要です。
福井大学も「一般枠全体」で見ると減る
福井大学の場合も、少し丁寧に数字を見る必要があります。
前期だけを見ると、
55名 → 70名
です。
ですから、
「福井大前期の募集人数が減って難化する」
という説明は正しくありません。
むしろ前期の定員は15名増えます。
しかし、一般選抜全体では、
現在:前期55名+後期25名=80名
から、2028年度は、
前期70名のみ
になります。
つまり一般選抜全体では、
80名 → 70名
となります。
一方、学校推薦型選抜Ⅱは、
34名 → 44名
へ増加します。
したがって福井大学では、
後期の一部を前期へ、一部を推薦へ移す
という入試構造の変更が行われると見ることができます。
医学部入試は「一般一本」で考えない方がいい
医学部には以前から、
- 一般選抜
- 学校推薦型選抜
- 地域枠
など、複数の入口があります。
また、国は地域医療を担う医師の確保を進めており、医学部では地域枠も大きな募集枠となっています。
もちろん、
地域枠=誰でも積極的に選ぶべき
という意味ではありません。
卒業後の勤務条件などがありますから、自分の将来像と一致するかどうかを慎重に考える必要があります。
しかし受験戦略という観点では、
「一般入試だけを見ていればよい時代ではなくなっている」
ことは確かでしょう。
では、「医学部一般入試は難化する」のか?
私は、こう表現するのが一番正確だと思います。
医学部全体が一律に難化するわけではない。
しかし、一般入試だけで医学部を目指す受験は、以前より「余裕がなくなる」可能性が高い。
受験生自体が急激に増えているわけではありません。
それでも、
- 後期日程が減る
- 推薦・地域枠という別ルートが存在する
- 前期で結果を出す重要性が高くなる
という変化があります。
だからこそ、
「高3になってから医学部受験を本格化する」
という考え方が、これまで以上に厳しくなってくるのです。
医学部受験で重要になるのは「早期完成」
医学部は、ただでさえ必要科目が多い受験です。
国公立医学部なら、二次試験対策として、
英語・数学・理科2科目
を高いレベルまで仕上げる必要があります。
さらに共通テストでは、
国語・地歴公民・情報
まで必要になります。
高3になってから、
「数学を完成させます」
「物理・化学を仕上げます」
では、その後の演習時間が足りません。
医学部志望者ほど、
高3を「習う一年」にするのではなく、「解く一年」にする。
この発想が重要になります。
高1では「推薦か一般か」を決めなくていい
ここで誤解してほしくないのは、
「高1から推薦入試対策だけをしましょう」
という話ではないということです。
むしろ逆です。
高1では、推薦を使うかどうかを決める必要はありません。
ただし、
高3になったとき、推薦を使いたければ使える状態にはしておく。
これが重要です。
そのために、
- 評定を落とさない
- 定期テストを軽視しない
- 提出物をきちんと出す
- 出席状況を整える
- 高校生活をきちんと送る
という基本を守っておく。
その一方で、一般入試で合格できる学力を作ります。
医学部志望・高1の目標
高1で最重要なのは、
英語と数学です。
医学部受験では、この2科目の完成が遅れると、その後の理科2科目が非常に苦しくなります。
したがって高1では、
学校より少し先を進みながら、英数の土台を作る。
そして推薦という選択肢を残すために、評定も確保する。
「学力」と「評定」の2本立てです。
高2が医学部受験の勝負どころ
実は医学部受験で最も重要なのは、高3より高2かもしれません。
高2のうちに、
英語・数学をかなり完成させる。
同時に、
物理・化学、あるいは生物を本格化する。
理想を言えば、高2終了段階で、
「まだ全範囲を習っています」という状態から卒業する。
ことです。
高3になったら、
- 共通テスト演習
- 二次試験演習
- 医学部過去問
- 理科の実戦演習
に時間を使いたいからです。
高3は「完成」ではなく「得点化」
高3では、新しい知識を大量に覚えることより、
持っている知識を入試得点へ変えること
が重要になります。
医学部の場合、
「数学は分かる」
だけでは足りません。
制限時間内に答案を作れる。
理科も、
「問題集は終わった」
ではなく、
初見問題でも点が取れる。
そこまで持っていかなければなりません。
そのためには、どうしても十分な演習期間が必要なのです。
そして「推薦を使えるカード」も残しておく
福井大学医学部医学科を考えるのであれば、さらに重要です。
現在の推薦Ⅱでは、学習成績概評Aなどの条件があります。
2028年度の推薦Ⅱ44名の詳細については、2027年7月に正式公表される予定なので、現在の条件がそのまま継続するとは限りません。
ただし、
高1・高2で評定を落としてしまったら、後から取り戻せない。
という問題は変わりません。
だから医学部志望者は、
一般で受かる学力を作る。
その一方で、
推薦を使える資格も失わない。
この考え方が非常に重要になります。
「推薦組」「一般組」と早く分けない
医学部志望者について、高1や高2の段階で、
「推薦組」「一般組」
と分けてしまう必要はないと思います。
むしろ、
一般入試で合格できる学力を作る
+
推薦を利用できる条件も維持する
この両方を進めるべきでしょう。
高3になったときに、
一般前期しか受けられない生徒
より、
推薦Ⅱも一般前期も選択できる生徒
の方が、戦略の幅は明らかに広くなります。
医学部受験は「持っているカードの枚数」を増やす
これからの医学部受験は、単純に模試の偏差値だけを見ていてはいけないと思います。
見るべきなのは、
- 学力
- 共通テスト力
- 評定
- 推薦資格
- 地域枠の適性
- 志望理由・面接
です。
つまり、
医学部に入るための「カード」を何枚持っているか。
この発想が重要になります。
福井大学医学部を目指すなら、なおさら早く動こう
福井大学医学部医学科は2028年度から、
前期70名
推薦Ⅱ44名
後期廃止
という入試へ変わる予定です。
これは、
「医学部を目指すなら推薦を受けなさい」
という話ではありません。
むしろ、
一般入試でも十分に戦える学力を早く作りながら、推薦という選択肢も残しておく。
ということです。
そして何より、
高3で医学部受験を始めないこと。
高1で英数を固める。
高2で英数を完成に近づけ、理科を本格化する。
高3では問題演習と得点力強化に入る。
医学部入試の入口が少しずつ変わっている今、
早く始めた生徒が有利になる構造は、これまで以上に強くなっている
と考えておいた方がいいでしょう。
医学部を目指すなら、
「いつから本気を出すか」ではなく、「今、何を完成させるか」。
そこから逆算して準備していきましょう。

